コンクリートaiサロン | 2026年10月

「建設現場の景色が大きく変わる?」
宮城県コンクリート診断士会・幹事
阿部 孝
建設現場では、少子高齢化により生産年齢人口の減少から人手不足が深刻な状況にあり、安全性と品質を確保しつつ、生産性向上(効率化、省力化・省人化)が課題となっている。加えて、カーボンニュートラルの観点から、型枠や仮設材の削減、廃棄物の削減によるCO2排出量の低減が求められている。
また、土木構造物は、設置される現場条件が個々に異なることから、一つひとつ異なる仕様で設計・施工される「一品特注生産」である他、極めて労働集約型の産業構造となっており、建設現場の一層の生産性向上が急務となっている。
コンクリート構造物の施工は、職人が現場で構築する「①現場打ち」が主流で、形状への柔軟性が高く現地への適合性が高いが、天候の影響を受け易く、施工に多くの手間を要し、工期が長くなる特徴がある。「②プレキャスト工法」は、工場生産により、工期短縮、品質確保、省人化、安全性向上、環境負荷の軽減などの特徴がある。
一方、「③建設3Dプリンティング(以下、3DCP)」は、デジタルデータに基づき、セメント系材料を積層造形する技術で、型枠(人・材料)の省略、形状が複雑な部材の製作、多品種少量の製品への適用、製造プロセスの自動化を通じ、大幅な省力化・省人化による生産性向上が期待される第三の施工方法として注目されている。
3Dプリンターの歴史を下表に示す。
表-1.3Dプリンターの歴史(概要)
年代 | 概要 |
1974年代 | ・雑誌「ニューサイエンティスト」の連載コラムに3Dプリントの概念を示された。 |
1980年代 | ・光造形法が発明された。(光硬化性の熱硬化性ポリマーを用いて、樹脂の3次元構造体を製作する方法) ・数百から数千の粉末金属の「層」とレーザーエネルギー源を用いて、基板上に「層」を形成して形状を製作する方法が発表された。 ・3Dデータの保存方式を発明された。 ・熱可塑性プラスチックインクを使用したカラーインクジェット2Dプリンターが開発された。 |
1990年代 | ・3D印刷と最も広く関連づけられる「熱溶解積層法」が商品化された。 ・インクジェット3Dプリンターの会社が設立された。 ・「3D printing (3DP)」の商標で販売され、他と区別して3Dプリンターと呼ぶようになった。 |
2000年代 | ・数万円~数十万円のものが発売され始め、個人や家庭でも導入されるようになった。 |
2010年代 | ・3Dプリンターがより幅広いプラスチックで印刷できるようになった ・3Dプリンター用ファイルフォーマットAMF(国際標準化委員会ASTMとISO)が定められた。 |
2020年代 | ・建築分野に応用され、3Dプリントされた住宅の販売が行われるようになった。 |
土木工事への3DCPの適用は、これまで集水桝、重力式擁壁、歩車道境界ブロックなどに適用されてきたが、埋設型枠(外殻)を3DCPで製作し、内部に配筋とコンクリートを打ち込んでRC構造物として重要構造物への適用も行われている。
3DCPは、施工プロセス(材料押し出し型)の特性から鉄筋を組み込めなく、構造体を造るのに配筋やコンクリート打設に人手を要する弱点があったが、「材料噴射型」が開発され、鉄筋入り構造部材の施工が可能となっている。
3DCPを用いて製造された部材の特性としては、
1)普通コンクリートに比べて単位重量が小さい。(擁壁工では安定計算を行う)
2)材料費が高価であるが、省人化・工期短縮が期待できるため、工事全体の妥当性を検証する。
3)積層プロセス(材料の量・温度、押し出し圧力、積層高さ、プリントの速度、積層時間間隔など)が造形物の品質を左右する。
4)力学特性に異方性(積層方向と直行方向の強度差)があり、曲げひびわれ発生後に、層間剥離を伴う脆弱な破壊モードを示す。
など、留意すべき事項も多い。
3DCPは、まだまだ解決すべき課題も多いが、圧倒的な工期短縮、省力化による熟練作業者不足への対応など、施工プロセスを抜本的に改革する施工方法であり、建設現場の課題解決の救世主として期待されている。
未来の建設現場の姿は、建設予定地にタワークレーンの様に幾つもの3DCPが設置され、コンクリート構造物が自動施工(無人化)される様になれば、これまでの現場のイメージが一変するのではないかと期待している。
○参考資料
・日経コンストラクション2026.7
・コンクリート工学2025.12、2026.5




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