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コンクリートaiサロン | 2025年11月

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コンクリート構造部材の再利用(リユース)について



  阿部 孝

  1. はじめに  温室効果ガスの影響による気温上昇に伴い、極端な気象現象の頻度と強度の増加リスクが高まっており、地球温暖化は深刻な地球環境問題となっている。この様な地球規模のリスクの低下を図るため、温室効果ガスの一つであるCO2排出量の迅速かつ効果的な削減が急務となっており、2050年のカーボンニュートラルの実現が長期目標として定められた。

     我が国のコンクリート材料分野では、CO2排出量削減に向けて、高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの産業副産物で置き換えたコンクリートの開発やコンクリート製造過程や硬化過程でCO2を固定する技術などが開発されている。

     しかし、カーボンニュートラルを達成するには、材料分野などの対策だけでは不十分で、構造部材の再利用(リユース)が注目されている。

  2. リユースの適用事例 2-1.建築分野の事例 1)事例-1

     1階建ての低層建物で使用したプレハブRCパネル部材(壁、屋根、柱)をサイズ変更や組立てシステムの大幅な変更を行わずに同様の部材として再利用されている。 2)事例-2

     既存建物の壁やスラブから回収したPCaパネル(簡単に分解可能な設計)を再利用して新しい住宅が建設されている。(PCaパネルの再利用率:80~85%)

    3)事例-3

     高速道路の仮設ランプから回収された鉄の骨柱・梁部材、コンクリートスラブを載せたPCa床版を住宅に再利用している。

    4)事例-4

     建物の基礎、基礎梁、小梁、床などのRC部材を新築建物の平面形状に合わせて切断後、新築現場の加工ヤードで接合部を加工し、現場で新材と接合することで構造体として再利用されている。(CO2排出量は約49%削減された)

    2-2.土木分野の事例

    1)事例-1

     高架道路(橋)は、シアーキーが付けられた長さ2.5m、幅1.25mのモジュール化されたコンクリートブロック同士を接着せずに、ボイド内にPC鋼材を挿入し圧着力を作用させて一体化(アンボンド工法)を図り構築されている。再利用時には、プレストレスを開放してPC鋼材を取り出すことでブロックを取り外すことができるようにしている。

  3. 今後の課題  構造体(部材)の再利用を図ってカーボンニュートラルや循環型社会を実現するには、部材の規格化を社会全体で考えていくこと、再利用部材を用いた構造や部材設計の開発が必要である。

     また、劣化・損傷による損傷区分と補修・補強による機能回復の必要性や部材性能(耐荷性・耐久性)などによる再利用部材の使用等級の判定、再利用後の使用期間の推定などの課題を解決していく必要がある。

     我が国では、高度経済成長期に多くのコンクリート構造物が建設されており、既存構造物を資源と捉え かつ人口減少による労働者不足にも対応できる様に構造部材の再利用を促進して循環型社会を実現していく必要がある。


参考資料:コンクリート工学Vol.63 NO.6

以上

 
 
 

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宮城県コンクリート診断士会

Miyagi Society of Concrete Diagnosis and Maintenance Engineers

【お問い合わせ】
事務局:鈴木 勝浩
   (株式会社 復建技術コンサルタント
​メール:info@miyagi-cd.com
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