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コンクリートaiサロン|2023年3月


鉄筋とコンクリート


鈴木 勝浩


 

 ここ数年、『豪雨災害』による災害復旧設計に携わる機会が増え、気象変動にインフラ整備が追い付いていないと感じることがある。50年確率や100年確率の雨量が数年置きに発生すれば、そもそもの確率年の考え方も見直さなければならず、『想定外の雨量』を想定内にしていかなければならない状況である。

 今年度も『7月豪雨』『8月豪雨』により東北でも多くの被害が発生した。特に、8月豪雨では山形県や秋田県で甚大な被害が発生し、現在も復旧作業が進められている。

今回、御紹介する事例も豪雨により被災した橋梁であるが、これまで経験した地震災や豪雨災の中でも特に印象に残ったものである。

 対象となる橋梁は、1970年代に架設された3径間の橋梁で、異常出水により橋脚基礎部の洗掘が助長され橋脚が損傷したものである。

豪雨直後のパトロールで、橋面が沈下していることが確認され、即日通行止めとした状況であった。平水位に戻った後に現地を確認した所、橋脚柱基部の損傷が確認され、橋面部で下流側1.5m程度、上流側0.5m程度沈下しており、橋脚も7度傾斜している状況であった。

 柱断面は、円形となっており、柱の軸方向鉄筋の半数が破断していることも確認され、損傷箇所は『鉄筋コンクリート』では無く、『鉄筋』と『コンクリート』の状態であった。

いつ倒壊してもおかしくない状況で、残されたコンクリートと鉄筋、主桁同士の噛み合わせにより、辛うじて成り立っていた。

 倒壊すれば河道閉塞など、新たな災害を生むことになるため『よくぞ、頑張った』が第一印象であった。

 詳細に調査すると、異常出水により上流側の底版下面が洗掘し、底版が上流側に傾斜し、柱部が損傷(破断)したと推察された。

 仮に、鉄筋量が現行基準並みに多ければ、柱基部は折れず、逆に上流側に傾斜・転倒した恐れもある。偶然が重なり、危ういバランスの上で倒壊を免れた状態であった。

 現在は、架替に向けて既設橋梁の撤去が進められているが、『触ると危険!』な状況であったので、仮支えを行いながら慎重に工事が進められている。

 無事に工事が進められ、早期復旧が完了することを願っている。





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