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役員の部屋|2018年9月


造る


近藤 克巳



 

 「ものを造る」ことが生業です。

 なので、新しくものを造ることがほとんどで、経年劣化した構造物をまともに視ることはまずありありません。(残念ながら、初期欠陥のお相手をすることはあります。)それでも、コンクリート診断士の端くれとして、MCDの活動に携わらせていただき、実際の構造物が経年劣化している状況に触れるなど、貴重な経験をさせていただいています。

 

 特に、橋梁点検調書の精査では、調査写真をもとに、損傷レベルの再判定、損傷原因の推定から、対策判定区分の再判定まで、一連の点検業務を模擬的に体験させていただきました。劣化の原因、構造物全体に対する影響を考慮した補修の必要性など、普段とは違う視点で構造物というものをいろいろと考えさせられています。

 

 折しも8/14にイタリアのジェノバで橋梁が崩落する大きな事故がありました。維持管理に問題があったとも、そもそもの構造自体や品質に問題があったとも言われています。今後、さまざまな調査が行われ、詳しい原因が明らかになると思われますが、建設時に問題があったと言われることは、「ものを造る」ことを生業としているものとしては、看過できない問題です。

 

 日本では、維持管理の基準が整備され、システムとして維持管理が行われるようになってきている一方で、東日本大震災の復旧などでも、より長く使える耐久性のある品質の良いものを造ろうとの取り組みが進められています。「ものを造る」という立場のものとして、まずはここから誠実に取り組む必要があると痛感しています。

 MCDの活動を通じて、構造物の維持管理の必要性はもちろんのこと、あらためてよいものを造ることがいかに大切であるかを身に染みて感じているこの頃です。

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