「3月号後日談」あるいは「考える姿勢」
渡邉 弘子
A:先月の「役員の部屋」読んだ?
B:読んだよ。
C:あ、まだ。
A:読んでみてよ。いつも面白いけど、
先月のはちょっと考えさせられたから。
C:今読むから待ってて!
・・・スマホでも読めて便利だよね~。
A:『コンクリートノ調合割合ハ容積ニ依リ
「セメント」ハ1500kgヲ以テ1m3トス』って
書いてあるでしょ?(※)
C:え、立米(りゅうべい)1500kg!? それだと粉体が多すぎない? 練り混ぜできない
んじゃないの。
A:そう。セメントの密度を3.16 t/m3と仮定すると、立米1500kgってことは475リット
ルだから容積のほぼ半分がセメントになっちゃう。だから、あれって、「1m3あたり
のセメント量は1500kgとする」と読むんじゃなくて、「コンクリートの配合は容積で
計算する」っていう前の部分と「セメントの質量は1m3当たり1500kgとして考える」
っていう後ろの部分に分けて読めばいいと思うんだけど。
C:セメントの質量が1m3当たり1500kg? それじゃ密度が1.5 t/m3だから今のセメン
トの半分にもならなくて、今度はそこがおかしいよ。
A:うん、そこはネックなんだけど、たとえば、セメントの成分が今と違っていて鉄分とか
の重いものが少なかったとか、充填度が低かったとか…。
B:それって「セメントのかさ密度は1.5t/m3とする」ってことじゃない?
確かに、同じ資料(※)の19条の表ではモルタルの密度が1.7t/m3になってて、
これも軽いから、本当にセメント自体が今より軽かった可能性もあるけどね。
A:でも、この表の鉄筋コンクリートの密度は2.4t/m3だし、石も2.6t/m3だから、
ここは今と同じだよ?
B:密度2.6t/m3の砂も、ふんわり詰めれば1.5t/m3くらいのかさ密度になるよ。
A:え、そうなの!
C:あ、「密度」と「かさ密度」との違いか。
A:そっか! セメントの「かさ密度」か!
B:(そう言ってるじゃん)うん。今でも発展途上国だと調合設計は
バケツに1:2:4杯というのが生きてるし、昔の日本でもそうだったから、
容積という考え方が大事だったんじゃないかな。
A:確かにバケツに何杯っていうのは簡単だし間違えにくいよね。重さをはかるための
道具もいらないし。
C:で、今さらだけど、Wikipediaに「セメントのかさ比重は1.5程度」って出てるよ。
A:(ガーン!)で、でもWikiがいつも正しいとは限らないし、こうやって自分たちで
考えて謎を解いていくって姿勢ってのが、エンジニアとしては大切じゃない?
B:謎といえば、実は、あの文章にはもう一つ大きな謎が…。
A・C:えっ?
B:土木なのに「調合」って気づいてた?
A・C:そこ!?
※3月号で鈴木さんが紹介している文献は、土木学会のデジタルライブラリーで読めます。
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