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役員の部屋|2019年9月


診る


近藤 克巳



 

 所属会社の社屋を建替えることになり、現在解体工事が進んでいます。本社勤務や別棟での勤務など、必ずしもこの建物でずっと過ごしていたわけではありませんが、入社前からの建物でしたので、感慨深いものがあります。

 実は、これまで「思い出の建物」というものに縁がありません。中学・高校は、卒業後まもなく移転・新築されましたし、大学は震災で建替えられました。そういえば、実家も離れているうちに、引越ししてしまいました。

 以前過ごした建物が解体されたという話を聞くたびに、自分の歴史の一部が削られてしまったようで寂しかったことを思い出しました。今回あらためて、建物はひとの生活に密接に関わっているのだと感じました。

 話は変わりますが、先日、劣化が進んだ橋に触れる機会がありました。数mスパンの小さな橋で、さすがに使われてはいませんでしたが、ほとんどの主鉄筋が露出し、破断しているものも少なくないという状態でした。どういう管理が行われていたのか詳細は分かりませんが、誰にも気にされずに劣化が進んでしまったものと思います。

 土木構造物は、橋、トンネル、ダムなどの大型構造物をはじめ、造成、下水道など、生活と密接に関わっているものの、普段の生活の中で意識されることは少ないのではないでしょうか。全くあるいは部分的にしか見えない、一瞬で通り過ぎてしまうなど、建物と比べて接する機会が少なく、意識されることは少ないのではと感じます。

 土木構造物を直接管理するのは、我々土木技術者ですが、使われる方々が日々愛着をもって接していただけると、より細やかな維持管理ができるのではないかと感じた次第です。

(実際にそういう活動をされている方々もいらっしゃると聞いています。)

 個人的には、施工中の構造物のほうが気になって仕方がないのですが、すでに使われている構造物ももう少し意識して診たいとあらためて思いました。

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