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役員の部屋|2019年(令和元年)5月


改めて技術者倫理


高橋 学



 

 

 つい2ヵ月ほど前,大手不動産会社の共同住宅で建築基準法違反の疑いがある不備が発覚し大きな問題となりました。一部の物件の外壁等で設計と異なる材料を使用したため耐火性能が建築基準法で定める基準を満たしていないというものでした。

 材料の変更については,工場や施工現場の作業効率を上げることが目的だったとのことです。


 単にこのような事象を引き起こした企業を批判することは簡単なことですが,他山の石として,これを機に我が身はどうかと冷静に思いをめぐらしてみてはどうでしょうか。

 たとえば,次の問いに常に,迷わず,自信を持って正解を答えられるでしょうか。


  • 安全確保やルール遵守より作業効率や工程の優先は止むを得ないと思ったりしないか。(ジレンマの中でも安全確保やルール遵守を優先できるか。)

  • 業務の根拠となる法令・ルールの意味や背景を十分に理解しているか。

  • 職場は不正をしようと思えばできる環境にあるのではないか。


 2015年には杭打ちデータの改ざんが発覚しており,このような事象が起こるたび改めて技術者の倫理意識の重要性を強く意識させられます。

 倫理意識の醸成には,実例を参考にしながら繰り返し,根気よく,丁寧に職場内周知や社内教育を行って不正に対する認識や感度を高めると同時に,疑問や不審に感じた人が遠慮せず声を上げることのできる職場の雰囲気づくりの必要性をいまさらながら痛感する今日この頃です。


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