
点検要領が変わる話
渡邉 弘子
全員:新年度にかんぱーい。ようやく年度末が終わったねー。
みち:ねえねえ、そういえば橋梁の点検要領が変わるって聞いたんだけど、ホント?
ずい:ここまできて仕事の話(笑)?
みち:避けてても、私たち最後は結局そうなるじゃん。
はし:だよね(笑)。で、この4月から定期点検が3巡目に入るじゃない?このタイミ ングで点検要領も変わるんだよ。
ずい:えー、知らなかった。
かる:橋梁だけじゃなくて、トンネルもシェッドも大型カルバートもだよ。
はし:そう。
みち:笹子トンネル天井版落下事故が起きたのが2012年12月で、「最後の警告」1)が 出されたのが2014年4月、そこから5年に1度の近接目視点検が始まったから、ち ょうど10年なんだよね。
はし:この10年でいろいろ課題も見えてきたじゃない?
かる:うん、例えばこんなだよね。
●技術者が不足する中で、点検を合理化するにはどうしたら良いのか ●診断の根拠となる、点検の質を確保するにはどうしたら良いのか ●診断結果のばらつきをなくすにはどうしたら良いのか ●せっかくの点検結果のデータを活かすにはどうしたら良いのか |
はし:そう。その答えとして出されたのが、今回の点検要領の見直しなんだよね。いちば ん大きく変わるのは、「(道路管理者が認めた)知識と技能を有する者」が、「点 検結果から構造物の性能を推定し(見立てて)、それをきちんと記録する」ってい う点。上から2つ目の箱の赤い丸のところ2)。
ずい:ちょ、ちょ、なんでそんな資料持ち歩いてるの??
はし:ふふふ。趣味。

かる:そのために、次回点検時までの状態を想定した技術的判断として、新たに「技術的評価A~Cの指標」っていうのができたんだよ。

みち:新しくA~C? 今までのa~dに代わる指標?
かる:ううん、これまでは部材に対しても橋梁全体に対してもⅠ~Ⅳって評価してたじゃ ない?それをやめて部材も橋梁全体もA~Cにして、最終評価だけⅠ~Ⅳにするの。
ずい:え、ちょっと待って。これってすごく大変じゃない? まず、地震とか洪水とか活 荷重とかの想定される状況を考えるんだよね。それについて、部材毎に変状が生じ るか生じないか推定して、さらに橋全体として評価して、さらにさらにⅠ~Ⅳ評価?
はし:そう、こんな感じ。今までの77条調書、通称、国様式とか様式1様式2とか呼ば れてた調書も変わるの。

ずい:次のページもあるよ。特別な取り扱いが必要な事象については別途記載で、さらに 所見欄にはその根拠となる考えを示すんだって。

かる:そう、本来あるべき姿ではあると思うけど、かなり大変になるよね。
ずい:ここまで細かく診断できるかな・・・。時間がすごくかかりそう。
はし:それと一つ気になっているのは、前提として、点検の合理化のために必要以上の記 録の削減を促すとされていることなんだ。確かにデータは大容量になっちゃうけ ど、残せるデータは残しておいたほうが良い気がするんだけどね。
みち:でも、管理者さんによっては、補修工事を発注したら報告書なんてもう見ないって 言ってる人もいるよ。
ずい:ああ、それ私も聞いたことある。残念だけど、自分の仕事を頑張るだけだよ。
全員:・・・飲もう!
1) 社会資本整備審議会道路分科会:「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」
2) 図表は、第20回道路技術小委員会 配付資料3-1から引用 001719754.pdf (mlit.go.jp)
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