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役員の部屋|2020年4月


「3月号後日談」あるいは「考える姿勢」


渡邉 弘子



 

A:先月の「役員の部屋」読んだ?

B:読んだよ。

C:あ、まだ。

A:読んでみてよ。いつも面白いけど、

  先月のはちょっと考えさせられたから。

C:今読むから待ってて!

  ・・・スマホでも読めて便利だよね~。

A:『コンクリートノ調合割合ハ容積ニ依リ

  「セメント」ハ1500kgヲ以テ1m3トス』って

  書いてあるでしょ?(※)

C:え、立米(りゅうべい)1500kg!? それだと粉体が多すぎない? 練り混ぜできない

  んじゃないの。

A:そう。セメントの密度を3.16 t/m3と仮定すると、立米1500kgってことは475リット       

  ルだから容積のほぼ半分がセメントになっちゃう。だから、あれって、「1m3あたり

  のセメント量は1500kgとする」と読むんじゃなくて、「コンクリートの配合は容積で

  計算する」っていう前の部分と「セメントの質量は1m3当たり1500kgとして考える」

  っていう後ろの部分に分けて読めばいいと思うんだけど。

C:セメントの質量が1m3当たり1500kg? それじゃ密度が1.5 t/m3だから今のセメン   

  トの半分にもならなくて、今度はそこがおかしいよ。

A:うん、そこはネックなんだけど、たとえば、セメントの成分が今と違っていて鉄分とか

  の重いものが少なかったとか、充填度が低かったとか…。

B:それって「セメントのかさ密度は1.5t/m3とする」ってことじゃない?

  確かに、同じ資料(※)の19条の表ではモルタルの密度が1.7t/m3になってて、

  これも軽いから、本当にセメント自体が今より軽かった可能性もあるけどね。

A:でも、この表の鉄筋コンクリートの密度は2.4t/m3だし、石も2.6t/m3だから、

  ここは今と同じだよ?

B:密度2.6t/m3の砂も、ふんわり詰めれば1.5t/m3くらいのかさ密度になるよ。

A:え、そうなの!

C:あ、「密度」と「かさ密度」との違いか。

A:そっか! セメントの「かさ密度」か!

B:(そう言ってるじゃん)うん。今でも発展途上国だと調合設計は

  バケツに1:2:4杯というのが生きてるし、昔の日本でもそうだったから、

  容積という考え方が大事だったんじゃないかな。

A:確かにバケツに何杯っていうのは簡単だし間違えにくいよね。重さをはかるための

  道具もいらないし。

C:で、今さらだけど、Wikipediaに「セメントのかさ比重は1.5程度」って出てるよ。

A:(ガーン!)で、でもWikiがいつも正しいとは限らないし、こうやって自分たちで

  考えて謎を解いていくって姿勢ってのが、エンジニアとしては大切じゃない?

B:謎といえば、実は、あの文章にはもう一つ大きな謎が…。

A・C:えっ?

B:土木なのに「調合」って気づいてた?

A・C:そこ!?


※3月号で鈴木さんが紹介している文献は、土木学会のデジタルライブラリーで読めます。




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