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コンクリートaiサロン|2023年11月



再生骨材コンクリートの普及に向けて


   阿部 孝


 

 わが国では、高度経済成長期に膨大な量のコンクリート構造物が建造されている。これらの構造物は、材料の経年変化や設置環境により様々な劣化因子が作用することで「老朽化」が進行している。

また、設計当時と比べて交通量や車両重量の増加、或いは耐震技術の向上などにより安全性が担保できなくなり、現行設計基準を満足しない「既存不適格」となっている構造物も見られる。

 一方、少子高齢化などの社会環境の変化や人々のニーズの多様化の他、コロナ禍をきっかけにテレワークが普及し、働き方、住まい方、生活様式などが大きく変化し、社会的要求から機能低下(陳腐化)となった構造物も発生している。


 「老朽化」や「陳腐化」した構造物は、解体・撤去して新たな構造物を建造するか、その構造物を活用しながら手を加えて(補修や補強)使い続けるかの判断を迫られている。構造物の解体を選択する場合、古民家の柱や梁などを新たに建てる建物の一部として再利用している様に、解体したコンクリート部材等を別の構造物の一部や他の用途として再利用する方法も今後の検討課題である。

 この様に、再利用することで限りある資源の有効活用を図り、環境の保全や環境負荷の軽減を果たしていく必要がある。


 材料のリサイクルの観点で見た場合、建設工事で発生する「コンクリート塊」の再資源化率は99%と高い値を示すが、その多くは「路盤材」としての利用であり、元のコンクリートに求められていた性能や品質より低い用途への利用となっている。

 材料のリサイクルを継続的に実施していくには、材料に求める性能や品質をリサイクル後に低下することを極力回避して、再生品が更にリサイクル可能なものにしていく必要がある。


 リサイクル骨材(廃棄されるコンクリート塊を破砕し、骨材に付着するモルタル分を除去)を活用した「再生骨材コンクリート」がある。「再生骨材コンクリート」は、JIS等の規格が整備されているが、バージン材を用いた場合と比較して、強度や品質の低下、品質の変動が大きいことなどから利用が殆ど進んでいない。

 また、再生骨材の活用に関しては、地域に偏りなく供給することが難しく、需要と供給のタイミングが合わなければ、在庫が増えたり、供給が確保できないといったミスマッチが懸念され、なかなか普及が進んでいない。この様なことから、コンクリート用の再生骨材の生産量は0.1%にも満たない状態である。

 今後、高度経済成長期に建造された多くのコンクリート構造物が「老朽化」や「陳腐化」により解体期を迎えるのは必至であり、「再生骨材コンクリート」の普及が急務である。

 「再生骨材コンクリート」の普及に向けて、

  ①再生骨材の製造コストの削減技術

  ②再生骨材の需給の一元管理システムの構築

  ③再生骨材コンクリートの品質低下、品質のバラツキを緩和する技術開発と仕様の拡大

  ④再生骨材コンクリート活用に対する評価基準の整備(インセンティブの付与)

など課題を解決していく必要がある。


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