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役員の部屋|2020年3月


竣工93年コンクリート橋


鈴木 勝浩



 

 今回の役員の部屋では、2019年の台風19号の災害復旧設計で関わった橋梁について御紹介したい。

 私が災害復旧設計として関わった「(主)丸森霊山線筆甫地区」では、2019年10月12日から13日にかけて宮城県沿岸を通過した台風19号により、日最大587.5 mm/day、時間最大74.5 mm/hrの豪雨を記録し、河川氾濫による道路流出や斜面崩壊など甚大な被害が発生した。

 今回御紹介する橋梁は、橋長6.0 mの短い橋梁で、上部工構造はRC桁、下部工構造は石積となっており、小さな沢を跨いでいたが、山側からの土石流で河道が閉塞し橋梁背面が流出したものである。奇跡的に倒壊せず上部工は残っていたが、下部工の石積が1つでも外れれば倒壊してしまいそうな状況であった。

 災害復旧設計を進めるにあたり、既存資料として橋梁台帳等を調べた結果、上部工の架設年次は1927年(昭和2年)と記されていた。若干の損傷は確認されたが、比較的健全な状況で『93年前のコンクリート』とは思えない状況であった。

 竣工当時、どのような材料が使われ、どのような品質管理のもと施工されたものか気になるところである。興味本位に、古い文献を確認したところ『附録 道路構造ニ関スル細則 大正15年6月』に材料と配合(調合)について記されていた。

  • 第18條 本則ニ規定スル鋼材ハ綴釘又ハ特殊ノモノヲ除クノ外建築用鋼トシ鉄筋コンクリート用「セメント」ハ「ポートランドセメント」トス

  • 第32條 コンクリートノ調合割合ハ容積ニ依リ「セメント」ハ1500kgヲ以テ1m3トス

 「セメントはコンクリート1m3当たり1500kg?」更に謎が深まってしまったが、私も100年後に残存し、健全な状態で使用し続けられる構造物を残していきたいと思う。

 年々、災害の頻度が高くなっているが、令和2年度は、災害が発生しないことを願いたい。


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