役員の部屋|2020年5月

最終更新: 6月22日


宮城県美術館


高橋 学



 宮城県美術館が移転する方針とのこと。

 当初は現在地でのリニューアルを検討していたのですが,年々老朽化する施設の管理コスト増が課題となり,同じく移転が決まっている県民会館との複合化により移転用地の有効利用,施設管理の効率化が期待できるとのことです。

 ちなみに,検討されていたリニューアル計画では改修費50~60億円,それでもいずれは建て替えが必要にはなるだろうとのことでした。


 宮城県美術館と言えば建築屋の間では有名な建物で,近代建築の巨匠といわれるル・コルビジェに影響を受けた前川國男氏の設計によるものです。

 建物は地上2階,地下1階,鉄筋コンクリート造(一部鉄骨鉄筋コンクリート造)で1981年に竣工しました。

 仙台市川内の文教地区の一角に立地し,周辺には大学,高校,博物館,国際センター,青葉山公園などがあり,地下鉄の駅にも近く美術館としては理想的な環境にあるといえます。

 建物の特徴はル・コルビジェの作品を思わせる入口部分のピロティ,約40年経ってもきれいな打ち込みタイルによる外壁,エントランスホールは2階レベルとも融合し心地よい空間となっています。


 美術館の移転についてアンケートを行ったところ,移転せず現在地で改修・増改築または現在の建物を生かしてほしいという意見が多い結果となったとのことです。

 コンクリートに注目すれば,約40年経ったとはいえ外壁はタイル張りですから有害なほどの劣化は見られないのではないかと思われます。


 個人的には,現在の美術館は都会の喧騒から離れ,素晴らしい建築を鑑賞しながら,落ち着いた雰囲気の中で豊かな時を過ごすことができる貴重な空間と思っています。

 ただ,管理する側としては増え続ける維持管理コストは大きな課題となり長い目で見れば建て替え等による効率化もやむを得ないのかもしれません。


 現在では確かな品質基準のおかげで,コンクリートが長寿命化してはいるものの,それでも躯体や内装,設備なども含めた建物の維持管理コストは避けられません。

 今後はますますライフサイクルコストを意識した建物の将来のあり方が重視されるように思われます。