特殊橋の点検手法について
阿部 孝
今年度、弊社で実施した橋梁定期点検において、特殊橋(斜張橋)の点検を実施した際、UAV(無人航空機)を活用した点検事例を紹介する。
我が国の橋梁、トンネルなどのインフラは、平成26年道路法の改正により、5年に1回のサイクルで近接目視による点検が義務付けられた。その背景は、平成24年12月、中央自動車道の笹子トンネルで発生した天井板崩落事故(≒130mに渡ってコンクリート板が落下)で尊い命(死者9名)が失われ、我が国のインフラの老朽化が注目されたことが契機となった。
現在、橋梁定期点検は、2巡目に入っている。
今回の対象橋梁(斜張橋)の点検は、積算上、橋梁点検車(BT-400:橋梁点検車の最上位)で見込まれていたが、斜材が制約となって橋梁点検車での作業範囲は大きく制限されたため、近接目視を確実に実施する方法として、ロープアクセスによる点検を提案した。しかし、ロープアクセスの作業性から、作業時間が長く、高コストが想定されたことから、事前にUAVにより橋梁全体の調査を実施して、損傷の進行が確認された箇所や新たな損傷が確認された箇所などを抽出(点検箇所を絞り込み)した後、ロープアクセスによる近接目視点検を行うことを提案した。
しかし、発注者と協議した結果、対象橋梁の点検履歴を確認すると、主塔・斜材は2年前、橋面・主桁は5年前に実施されており、全ての部材に対して本点検から5年サイクルとしたいとの意向から、全部材に対してロープアクセス(橋面、橋台を除く)による近接目視点検を実施することになった。
今回弊社では、委託範囲外であったが、点検範囲に対してUAVを用いた劣化・損傷状況の調査を実施して、橋梁点検へのUAVの実効性を確認して今後の点検資料とすることにした。
点検箇所をロープアクセスとUAVで撮影した写真を比較して見ると、UAVによる撮影でも200万画素+工学ズームのカメラを使用することで、ほぼ同等の判読が可能であった。点検方法として2段階になるが、点検範囲全体をUAV等で確認した後、点検範囲(箇所)を絞り込んでロープアクセスなどの近接目視点検が可能であれば、作業の省力化が図れて効果的であると言える。
一方、UAVによる調査の課題として、
撮影位置はGPSで確認できるが機体位置になること(撮影箇所の判読に時間を要した)
けた下はGPS機能が使えなく、手動操作が基本となること(高度な操縦技術が必要である)
撮影した写真から直接ひび割れ幅を検出できないこと(別途、画像解析が必要である)
浮きが認められる箇所での打音調査が困難であること(打音点検ロボットが開発中)
などが挙げられた。
最近では、UAVを活用した赤外線による調査、ひび割れ調査、鉄筋探査、打音測定などの点検・調査方法も開発されており、積極的に新技術の活用することで点検作業の省力化・省人化・コスト削減を図っていく必要がある。
ロープアクセスによる調査状況 UAVによる調査状況
ロープアクセス及びUAVによる撮影写真
Comments