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コンクリートaiサロン|2024年11月



「型枠1本締め工法」の誕生


                阿部 孝


 

 「型枠1本締め工法」は、鹿島建設が岡部、丸久(福岡県糟屋郡志免町)、楠工務店(東京都杉並区)と共同開発した型枠工事の省力化工法である。

 

 鉄筋コンクリート造りでは、流し込んだコンクリートが硬化するまで、歪みや凹凸が生じたり、形がズレたりしない様に、型枠を外側からしっかりと固定する必要がある。当初は、三寸角の木バタを番線で締め付けるもの(番線工法)だったが、その後ネジ式の締付け金具の登場により、型枠の施工性と精度が一気に改善された。

 

 現在使用されている固定方法(2本の鋼管と締付け金具で固定:「在来工法」)は、戦後間もない1950年代に誕生したもので、約70年経過するが材料や構造などは大きく変化していない。(写真—1、図—1参照)

 一方、昨今の建設現場では、型枠大工の高齢化や若手入職者の減少、労働力の質の低下(外国人労働者の増加)などにより、熟練度の低下や生産性の低下が課題となっている。

型枠工事では、材料の軽量化、型枠工法の簡素化が急務であり、鋼管2本で支持する仕様からアルミパイプ1本で支持する「型枠1本締め工法」が開発された。(写真—2、図—2参照)

 「型枠1本締め工法」の生産性向上の効果を検証するため、建築面積5000㎡の住宅(5階建RC造)に適用して、半分を「在来工法」、残りを「1本締め工法」で実施された。検証結果は、表-1(次頁)の効果の項に示す様に、材料の削減により大幅な軽量化(約50%)、施工方法の簡素化により歩掛向上(約20%)が確認された。

 今後、コンクリート構造物の施工現場において、「型枠1本締め工法」の適用が進めば、材料の軽量化は技能者の身体的負担を軽減すると共に、施工の簡素化は安全性の向上、歩掛の向上は作業時間の短縮に繋がる大きな改善が期待されている。

 

 「型枠1本締め工法」は、約70年間誰一人疑問を持たずに実施してきた「在来工法」に対し、なぜ外端太が鋼管2本仕様であるのか?、その理由に深く迫ることで誕生に至ったものである。

 

 「型枠1本締め工法」誕生に至る「在来工法」の課題発見のアプローチは、普段、示方書やマニュアルなどの基準類で定められた材料、標準的な構造形式や施工方法を適用して進めることが当たり前になっている私にとって気づきとなった。

 大きな改善は難しいにしても、「なぜ?・なぜ?・なぜ?・・・」という問い掛けを繰り返すことで問題点の抽出や改善点を探ると共に、解決策を策定する仕組みとして技術者一人ひとりが取り組むことで、生産性の向上や環境負荷の軽減に向けて前進させていく必要があると感じた。

 

[参考資料]

・コンクリート工学 2024.7

・日経コンストラクション 2024.7

 

以上




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