コンクリートaiサロン|2022年4月


グリーンインフラ? グレーインフラ?


渡邉 弘子


 

 緑豊かな4月、はまだですが「グリーンインフラ」をご存知ですか。そもそもは1990年後半に欧米で始まった取組みですが、初めて聞いた時は「それが何?」と思いました。自然と共存し自然の恵みを享受してきたと思っている日本人的感覚の私としては、米国と欧州の事例(図-1)である、雨水を地面に流し込むとか、生態系保全のために空き地を活用するとかを見て「何を今さら?」と思ったのです。でも、時代は変わって来ています。今の時代、グリーンインフラは日本でも意識して取り組むべきものなのだと思い改めています。


図-1 グリーンインフラ事例(欧米)

出典:国土交通省ホームページ【導入編】なぜ、今グリーンインフラなのか

 

 図-1から推察されると思いますが、米国と欧州とではグリーンインフラの定義が少し違っています。米国は、下水道管をはじめとする社会インフラの再整備コストの縮減と長寿命化及び水質の浄化を目的としていて、グリーンインフラはハードインフラの代わり、もしくは付加するものと定義しています。欧州では、水質浄化や気候緩和など生態系サービスの維持や形成を主目的としていて、そのサービスを提供するように戦略的にネットワーク化された自然環境をグリーンインフラと定義しています。


 わが国では、2015年の「第4次社会資本整備重点計画」で、グリーンインフラとは「社会資本整備、土地利用等のハード・ソフト両面において、自然環境が有する多様な機能(生物の生息・生育の場の提供、良好な景観形成、気温上昇の抑制等)を活用し、持続可能で魅力ある国土づくりや地域づくりを進めるもの」と定義されました。米国と欧州に比べると具体性に欠けますし、両者の「良いとこ取り」っぽいですが、図-2に示す我が国の事例を見ると、米国よりは欧州の考えに近いように思います。









図-2 グリーンインフラ事例(日本)

出典:国土交通省 総合政策局 環境政策課「グリーンインフラ推進戦略」について,2019年10月9日


 ところで、「グリーンインフラ」に対して、従来のコンクリート等により整備されたインフラを「グレーインフラ」といいます。『コンクリートからヒトへ』というキャッチフレーズがありましたが、「ヒト」と「コンクリート」が対立するものではないように、グリーンインフラとグレーインフラも対立するものではありません。時々、「緑のダムがあれば人工的なダムなんかいらない」という人がいますが、山林を涵養するだけでは渇水や洪水を抑えることができないのと同じです。グリーンインフラとグレーインフラは図-3に示すように連続したものであり、気候や風土、土地利用条件などの地域特性を踏まえて適切に組み合わせていくものです。


図-3 グリーンインフラとグレーインフラは連続している

出典:国土交通省ホームページ【導入編】なぜ、今グリーンインフラなのか

 その後、わが国では2018年に「グリーンインフラ懇談会」が設置されてグリーンインフラの推進に向けた議論が本格的に開始され、2020年には官民連携を目的に「GI官民連携プラットフォーム」が設立されました。国土交通省も2021年に公表した「国土交通グリーンチャレンジ」の中で、「グリーンインフラ」をテーマの1つに挙げています。そして今、グリーンインフラの導入効果の評価に関する技術開発が盛んになってきています(表-1)。



表-1 グリーンインフラの主な効果についての検討すべき評価手法

出典:日経コンストラクション,2022.1.10

 

 今後、グレーインフラは代替可能なところからグリーンインフラに代わっていくかも知れません。グリーンに偏り過ぎて安全性に不安が生じたり、グレーに偏り過ぎて気持ちが殺伐としたり(?)せず、きれいな水と緑の中で生き物と快適に安全に暮らしていける中庸の道、それが今後目指していくところでしょう。コンクリート診断士としては、グリーンに任せられるところとグレーが担うところを見極めて、グレーの担う安全性をきちんと担保していくことが使命だと考えています。