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コンクリートaiサロン|2022年11月


橋梁補修工事の品質管理への取り組みについて


 阿部 孝

 

 我が国の社会資本ストックは、高度経済成長期に集中的に整備されている。今後、急速(集中的)に老朽化することが懸念されることから、戦略的に維持管理・更新することが求められている。

橋梁のメンテナンスサイクルは、1巡目の定期点検が2019年に終了し、点検結果を踏まえて補修工事等の措置が実施されている。

 しかし、近年は、断面修復工法等の補修工事を実施した後、再劣化事例が報告されていると聞く。材料や施工など原因と想定されるが、適切な材料が選定されても施工時に工程遅延などから完了を早めたい心理から一度の施工厚を厚く施工した結果、補修材と既設コンクリートの接着不足や空洞の発生が生じている可能性がある。

 点検結果を踏まえ計画的に補修工事が実施されても再劣化が繰り返し発生すれば、メンテナンスサイクルに大きく影響する。


 以下に紹介するのは、供用後50年が経過する市道橋で実施された床版の断面修復工事(左官工法)箇所に対し、衝撃弾性波法(非破壊試験)により評価した事例である。


 断面修復工法に求められるのは、補修材(ポリマーセメントモルタル)と既設コンクリートとの接着が十分であり、空隙や空洞等の不連続面が存在しないことである。

 衝撃弾性波法の測定方法は、弾性波入力点を床版下面、受信点を床版上面として透過弾性波速度の平均値を算定する。評価方法は、測定した透過弾性波速度の平均値より5%以上小さくなった場合を異常値と判定する。

 ※充填した補修材と既設コンクリートとの接着が不完全であることにより測定される透過弾性波速度が大きくなることはない。

 

 透過弾性波速度の平均値より異常と判定された箇所でコアを採取(φ50㎜)してみると空隙が確認され、採取後のコアは、この部分(空隙箇所)で分離した。一方、透過弾性波速度の平均値が正常と判定された箇所で採取したコアは、補修材と既設コンクリートとの一体性に問題なかった。衝撃弾性波法は、補修材及び既設コンクリートを伝搬する弾性波の伝搬経路中の内部に空洞や空隙などの不連続面存在すると、健全部と異なる測定結果となることが確認され、断面修復工等による補修箇所の異常を検知できる有効な手段である。


 点検-診断-措置-記録としてメンテナンスサイクルを確実に回すためには、補修工事後に再劣化を生じない確実な工事を行う必要がある。

 断面修復工事では、品質照査の管理基準が詳細に定まっていないことから、目視による外観検査のみが実施されているが、補修箇所の外観から内部の状態を評価(判定)するのは困難である。

 今後の確実な補修(断面修復等)工事に向けて、施工方法・施工手順など施工マニュアルを制定する他、実施工講習会の開催と受講者への施工技術者の認定、非破壊試験(衝撃弾性波法など)による品質管理方法を充実させていく必要がある。

 

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