コンクリートaiサロン|2021年12月


診断業務とデジタルファブリケーション


西脇 智哉


 既に広く認知されている通り、日本は少子高齢化と人口減少という極めて厳しい状況にあり、特に建設分野における労働者の高齢化や、労働人口の絶対数の減少は顕著に表れています。加えて、気候変動による酷暑・厳寒などの異常気象も常態化しつつあり、労働災害防止の観点からも建設施工の現場では省力化・省人化が強く求められています。さらには、新型コロナウイルス(COVID-19)の猛威は一時期ほどではないにせよ、Ο(オミクロン)株が国際的に猛威を振るっているなど相変わらず予断を許さない状況が続いています。これらは決して明るい話題ではありませんが、これまでの建設施工現場のあり方自体を見直す契機と捉えて大きな変革に繋げることを考えたいと思います。

 昨今は「建設DX」や「デジタルファブリケーション」といった言葉も随分と話題に上るようになりました。ここでは、筆者の研究室でも取り組んでいる建設用3Dプリンタについてご紹介させてください。現在、建設用3Dプリンタは国内外において活発な研究が行われています。国内でも大手ゼネコンからベンチャー企業まで多くの会社での取り組みが見られます。しかし、取り組み例は海外事例が圧倒的で、下図はELstudioというウェブサイト上に示されている、2015年ころまでの建築に関わる3Dプリンティングに関するプロジェクトを時間軸と地図上でまとめたインフォグラフィックです。グレーのプロットがコンクリートに関わるもので、ほかにも粘土・土(茶色)やプラスチック(黄色)など多岐に亘るプロジェクトが、2012年ころを境に急増していることが分かります。残念ながら、この時点では日本国内のプロジェクトは一つも捕捉されていないようです。




 さらに下のグラフは、2028年までの建設用3Dプリンタのマーケット予測で、毎年倍増に近い勢いで拡大するとされています[出典]。極端な例では、ドバイは2030年までに新築される建物の25%を3Dプリンタによって施工するとしています。日本は地震のリスクが常にあり、建築基準法などの厳しい制約も多く、簡単に社会実装まで到達するのは容易でないことが明らかですが、いつまでも国内で閉じたままでいることも難しいと思います。

 建設3Dプリンタの特徴の一つに、オーダーメイドやカスタマイズが得意だという点が挙げられます。診断業務は、一つ一つの構造物が、それぞれ違う環境で違う履歴を受けてきたことで、独自の変状を見せます。実際の構造物を3Dスキャンして、実際の状態にあったオーダーメイドの補修部材を3Dプリンタで作って現地に運び込み、限られた人数でも短工期で完了させるといった、これまでにないブレイクスルーの可能性があると前向きに捉えてチャレンジしていければと思います。