コンクリート診断士としての私の役割
(株)高野コンクリート 千葉 兼人
私は、宮城県南三陸町の海沿いに面した生コン工場で勤務しており、これまで東日本大震
災によって甚大な被害を受けた町の復旧、復興に携わってきた。とてつもなく多忙な毎日を
送り、気付けばすでに12 年が経過し、海にはそびえたつ防潮堤、町には震災前では考えら
れないほどアーティスティックな建物が並んでいる。コンクリート主任技士として、生コン
クリートと関わり、膨大な量の生コンクリートを製造、管理してきた。そんな多忙な中、コ
ンクリート診断士についてはかなり苦労をして勉強をし、取得しする事が出来た。
取得したからにはコンクリート診断士としていろんな構造物を診断し活躍してやるぞと
始めは意気込んでいたが、正直なところ新設構造物ばかりがひしめく状態で診断士として
活躍できる場がこの地域にはかなり少ない。一時はコンクリート診断士として活躍する場
はこの地域にはないのかと嘆いた事もあったが、コンクリートの打設現場、また硬化後の構
造物の出来などを見せて頂きに現場に度々伺わせていただくと、現場代理人の方から「コン
クリート診断士として見て、この出来はどうですか?」と聞かれる事がある。そのような問
いに、自分が勤める生コン工場から出荷した生コンと地元の施工業者が行う施工に「あまり
よくないですね。」とは言えるはずもないのが生コン工場に常駐するコンクリート診断士な
のである。
しかし、中には熱心な現場代理人から施工前にどのような打設方法で行うべきか、打設に
おける注意点はあるかなどの相談を受ける事がある。もちろんそこまで熱心に施工管理を
行っている現場代理人が求めている返答が型枠の内側を湿らせてくださいとか、バイブレ
ーターは入念にかけてくださいとかそんな初歩的な事であるはずは無く、硬化コンクリー
トの診断を行うコンクリート診断士が硬化後の事を考えた打設方法、注意点を聞き、構造物
に発生するひび割れを少しでも無くすためなのである。ここ数年の間にこういった相談が
増え、私なりに精一杯対応していく中で、今の、またこの地域にいる私に、コンクリート診
断士としての役割があると感じるようになった。
コンクリート診断士が行う仕事を事後(ひび割れ発生後)とするならば、私が生コン工場
に勤めている事とコンクリート主任技士の知識を加えて、事前(ひび割れ発生前)に重点を
置いたコンクリート診断士として活動していく事で、町の、また地域の構造物を少しでも長
く健全に供用していく上での一助となれればと考えている。そのためにはコンクリート診
断士会を始め、各種講習会に出向くなど、先生方、先輩方の知識や経験を知り、自身をレベ
ルアップさせていく事が重要であると考えている。コロナウイルスが第5類となり、日常の
生活を取り戻した中でこれからは再度様々な方面への交流を深め、それを活かし地域の技
術者、地域の一員として頼れる存在を目指していきたいと思う。
南三陸町風景
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