コンクリートは愛情をもって

國吉 慎一

 学生時代に単位を落としかけ、どうしても好きになれなかった『コンクリート』

 その維持管理等に携わり約43年が経ちましたが、今でもコンクリートへの対応の難しさを実感しております。

 過去において、コンクリートについてもっと研鑽しなければならないと感じた大失敗の事件がありました。(失敗談は沢山あります)

 昭和54年NATM工法にて施工された巻立延長142.5mの国道トンネルのアーチ部に新設当初から発生していた亀甲状ひび割れ対策としてロックボルト+コンクリート吹付け工法により、既設二次覆工コンクリートの落下を防ぐ補修工事を行いましたが、約一年後吹付けしたコンクリートの一部が国道上に落下し、幸いにして通行車両を含め人的被害はありませんでしたが、今考えてもゾッとする出来事を発生させてしまいました。

 その後トンネル内調査、吹付けしたコンクリートの1時間毎の動態観測及び対策検討と1ヶ月以上の通行止めを余儀なくされ、その間は毎日生きた心地はしませんでした。

 吹付けしたコンクリートの落下原因の一つとして、既設二次覆工コンクリートと吹付けしたコンクリートとの下地処理(付着)の問題があげられました。

 営業所内現場の総括責任者として、当初の対策工法の検討も含め土木屋としてコンクリートへの知識不足及び現場管理不足があったものと痛感しております。

 そのような現状にあって、当時の国道維持出張所長(技術士・建設部門)の冷静かつ技術的に的確な指示及び采配は、25年以上経過した今でも忘れることができません。

 コンクリートは本当に正直であり、コンクリートに関する知識はもちろんのこと、コンクリートへの愛情や愛着そして手間を注いだ分、良いコンクリートになるものと確信しております。

 皆様も一度は読まれたことがあると思いますが、曽野綾子の小説『無名碑』の中に主人公三雲竜起と上司の田上とのコンクリートに対して非常に愛着を表現されている部分があります。

 田上はズボンのポケットからマッチを採りだし、一つの火から二人は煙草に火をつけた。そして田上は、マッチを捨てる動作であたりを見廻し、通廊下のコンクリートの肌を、愛犬の首筋でも愛撫するように撫でながら「きれいに仕上がっている」と。

 近年、コンクリート構造物の深刻な劣化や損傷が顕在化し、維持管理の重要性が問われており、コンクリート診断士が果たすべき役割と責任は極めて大きいものと感じております。

宮城県コンクリート診断士会

Miyagi Society of Concrete Diagnosis and Maintenance Engineers

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事務局:吉田 博輝(株式会社 吉田レミコン)
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